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タイは世界8位の高付加価値訪日市場|ラグジュアリー旅行会社との協業が必須

結論(要点)

タイは訪日「高付加価値旅行(1名あたり着地消費100万円以上)」で、旅行者数・消費額ともに上位グループの重要市場です。国別ではタイはシンガポールに次ぐ8位で、構成比は3.3%、英国・中東より上位です。
クレジットカード決済額でもタイは8位です。
したがって、全24市場の中で8位規模の高付加価値旅行ターゲットが実在する有望市場と言えます。
タイの高付加価値旅行者の誘致には、特殊な高付加価値旅行会社(Luxury Travel Agency)との協業が不可欠です。

「高付加価値旅行」の定義

日本政府観光局(JNTO)は「1回の旅行で1名100万円以上を消費する訪日旅行」を高付加価値旅行と定義しています。2023年の全訪日客に占める比率は2.4%、59万人でした。

タイが高付加価値訪日旅行市場である数値的根拠

タイ訪日市場は高付加価値旅行
高付加価値訪日旅行者数:タイは3.3%で8位(中国、米国、台湾、香港、韓国、豪州、シンガポールに次ぐ)。英国(2.8%)・中東(2.0%)より上位。

高付加価値消費額:タイは3.3%で8位(上位国は同上)。英国・中東より上位。

クレジットカード決済額でタイは8位タイ訪日市場は高付加価値旅行

次々とタイで実施される高付加価値訪日旅行ツアー

タイ市場では100万円超レンジの訪日商品が実際に企画・販売されています。季節や在庫により構成は変動しますが、直行便+専用車+上質宿泊+特別手配を核に、撮影映えとストーリー性を備えた体験が選ばれやすいという傾向は一貫しています。
例えば、JR東日本のリゾートトレイン四季島(
1名約200万円)がタイに販売枠が割り当てられたり、1名100万円を超える東北ツアーが完売しており、現地でも高付加価値旅行が実際に企画・催行されている事実があります。

なお、タイにおける東北ツアーは一般的に、スイスなどの欧米ツアーより高価です。

タイ発スイスツアーの例

今年の旅行博において、スイスツアーはおおよそ、
スイス周遊8〜9日で、例えばドイツ・オーストリア・スイス(アルプス横断)8日、
イタリア・スイス・フランス(3か国)9日等が6~8万THB(約30~40万円程)で販売されています。

タイ発東北ツアーの例
・【1名約71万円】 Elite Holiday & Agency「Tohoku Sendai Tour」(6泊7日) 1人あたり147,500THB(約71万円)。
行程:青森、岩手、秋田、山形、仙台、東京

・【1名約77万円】 Top of the World(13泊14日) 1人あたり159,900THB(約77万円)。
行程:大阪、能登半島、黒部、上越、新潟、佐渡、会津、足利、東京

以上から、欧米より高くなる傾向のある東北などの地方へのツアーは、タイ市場においては一般的な海外ツアーではなく、タイ人にとっては高付加価値旅行に属する商品であり、地方は高付加価値を高めるプロモーション施策を検討するのがタイの市場性に即していると考えられます。

高付加価値旅行者の特徴は「手ぶら」

「直行便・ラグジュアリーホテルが重要」
ここでいう「手ぶら」とは、荷物・移動・段取りの負担を最小化し、滞在の質を最大化する選好を指します。具体的には、直行便/専用車/上位客室を前提に、当日変更に対応できる事前準備を極力想定して設計することが鍵になります。タイ人高付加価値旅行者(富裕層)は意味のない移動を好まず、徒歩は5分でも敬遠されることがあります。投資対体験という、意味のある体験について時間対効果(タイパ)を重視し、通常はタイのフルサービスキャリアであるタイ航空を選びます。

宿泊は和モダンスタイルの、布団敷きよりベッドタイプを好む傾向があります。ハイブランドの5つ星ホテルまたは洗練された建築・デザイン・サービスに定評が高いか、歴史的ストーリーのある高級旅館を求めます。温泉は客室に個室設備または貸切風呂で眺望の美しさ、和の雰囲気でのプライベート感を重視します。

レストランや食事ではアレルギー対応、宗教対応、苦手食材の確認が必要で、ビーガンやベジタリアン対応も求められます(宗教以外の、家族の慣習による食事制限の場合もあります)。 基本的には、ご当地でしか食べられないAuthentic(真正)なグルメを希望していますが、何食も連続して和食や海鮮が続かないように、高付加価値旅行取扱旅行会社(Luxury Travel Agency)は気を遣って食事の予定を入れます。 2025年時点のタイ・ミシュランガイドには、三つ星が1店、二つ星が7店、一つ星が28店、グリーンスターが4店、ビブグルマンが156店掲載されていますので、高付加価値旅行者が普段触れているグルメについて確認するのも良いでしょう。

「移動は最小・アクティビティは柔軟に」
タイの高付加価値旅行者は、欧米人高付加価値旅行者のように活動的でない傾向があり、普段は多くのスタッフをかかえ投資事業や会社経営を行って生活しています。タイの歴史的・文化的理由から、日常で家事・運転を外部化する世帯が多く、高付加価値旅行者でなくともメイドさんや運転手さんがいるのは一般的です。
よって、自分の時間や判断が優先されることが当然である価値観であるため、旅行中も自身での
運転や体験など、労働に近いと判断される活動は敬遠され、逆に手ぶらで気軽なリラックスさと利便性を重視し、突然の行程変更に対応できる柔軟さが求められます。 彼らも、モバイル決済を登録したスマートフォンだけは手に持っています。
同じ理由で、(年中暑いタイ生活の影響なのですが)徒歩移動や
長距離移動は好まず、状況によっては途中で切り上げたいニーズがあります。 移動手段はマイクロバスや大型ミニバン(例:アルファード)、貸切大型バスなどで、買い物を大量に行いかつ利便性を高めるため、新幹線のグランクラスと荷物運搬用の専用車を同時に使うことも珍しくありません。
旅行中は、タイの高付加価値旅行者も、家族の思い出のために
撮影や写真スポットを重視し、アクティビティそのものよりも撮影を優先する傾向があります。
また、十分なショッピング時間の確保も重要です。

これらの気の利いた行程を組めるのが、これらの配慮を一括設計できるのが、高付加価値旅行会社(Luxury Travel Agency)です。タイから高付加価値旅行者を誘致するなら、彼らとの連携が重要です。

高付加価値旅行会社(Luxury Travel Agency)との協業は必須

タイには、JNTOの「訪日旅行を取り扱う旅行会社」リストに含まれていない、規模は小さくとも長年に渡る人脈と信頼で富裕層(高付加価値旅行者家族)のカスタマイズ旅行や、予算をふんだんに使えるタイ政府部門やタイ企業の報奨旅行を企画・実施している高付加価値旅行会社(Luxury Travel Agency)が複数存在します。

彼らと高付加価値旅行者誘致を協業するには、

五つ星のハイブランドホテルや、高級旅館があればまず伝える(宿泊先が活動の起点になる)
②世界でもユニークな観光資源はなにか、惹きつけられる写真を提供(アフリカのサバンナや、アラスカのオーロラを見ている人たちですので、誘致にはそこにしかない唯一無二の体験は必要)
③次回の顧客への旅先案提示時に、提案してほしいと依頼(1人1泊5,000円程度の宿泊助成金よりも、出迎え横断幕や、ゆるキャラ出張などが喜ばれることも多いです)

の3ステップが基本となります。

まとめ:タイは「質も量も」狙える市場

以上より、タイからの高付加価値旅行は規模と購買力の両面で無視できない市場です。
訪日数でも2025年上半期(1–6月)に約68万人で、全体6位の主要市場となっています。

また、誘致には高付加価値旅行会社(Luxury Travel Agency)との協業が必須と言えます。

マス向けでなく、富裕層(高付加価値旅行者)へ向けた高付加価値旅行をタイやシンガポールから検討されたい自治体・DMO・旅行会社・PR会社等団体様は、お気軽にご相談ください。

アジアクリック 高橋学

台湾観光フェア(バンコク)レポート|エンタメ性で訪日関心を高めるヒント

バンコク都心の商業施設 エムスフィアで、2025年9月12日(金)〜14日(日) に台湾観光の大型プロモーション「TAIWAN Travel Fair 2025」が開催されました。来場登録は無料、会場での各体験参加者を対象に「台湾往復航空券が当たる抽選」などの特典も用意され、期間中にぎわいが続いていました。

台湾も重視するタイ人観光客、楽しませる企画に学ぼう

台湾観光局は、タイ人旅行者を最重要ターゲットの一つとして位置づけており、体験型イベントや車両ラッピング広告など、バンコクでの露出を年間数度ほどと定期的に展開しています。今回の会場でも、飲食・工作・舞台企画を組み合わせた“触って学べる”導線が意図されていました。

イベントでは、タイの人気俳優・Alek Teeradetch(アレック・ティーラデート)によるステージやファンと行く台湾ツアーの紹介、タイ最大手のQuality ExpressやFORMOSAなどタイ旅行会社によるツアー紹介がステージや旅行会社ブースにて連日行われました。

実際の販売商品と価格の例:

(左)クルーズ船MSC BELLISSIMAによる「台湾 & 日本沖縄」2カ国クルーズ
69,900バーツ~/2025年12月10–15日、同22–27日。バンコク発着、台北経由で沖縄方面へ。販売:Arcadia Cruise Center。

(右)「アレックと行く台湾ファンミーティング」4日3泊
19,800バーツ/2025年10月23–26日、STARLUX Airlines 利用。行程例:台北101、九份、野柳地質公園 ほか。主催:RAKYIM TOUR。

“体験”のメニューも豊富で、DIYゾーンでは
台湾ゼリー試食、阿里山コーヒー、ホイールケーキ、ハンカチのシルクスクリーン刷り、タイルの手描きブローチ/コースター、ミニ提灯づくりなどを実施。


ステージゾーンでは
オープニング、「台湾についてどれだけ知っていますか?」クイズ、中国雑技Eye Catching Circus「Liu Sheng Ji」の披露、アーティスト「No One Else」の出演、そしてアレックのファンサービスが実施されました。

タイ人来場者の声

来場したタイ人たちに聞くと、次のような声が目立ちました:
「台湾と比べて、日本は四季や行く場所の多さが魅力」

「でもPRは台湾や他国の方が上手で、楽しくて参加したくなる」

「日本のイベントは各ブースがパンフレット配布中心で退屈になりがち」

「(日本の)パンフレットは教科書的でワクワクしにくい。海外旅行は仕事ではなく“エンタメ”」

外国人観光客にとって訪日はエンタメ。PRはもっと楽しい体験型に

今後タイでも、JNTOのFITフェアや、タイティアオタイ/ノック、Japan Expo、TTAA主催のTITFと立て続けに日本PRイベントが続きます。
せっかくタイ人と面と向かって会える機会です。デジタルの説明だけでなく、

●配布物だけで終わらせず、来場者が「作る」「味わう」「撮る」「当てる」といった体験を通して楽しめる仕掛けを用意しましょう。五感とゲーム要素を取り入れ、家族や友人など旅行を共にする相手と一緒に参加できる設計が効果的です。

●価格×体験の“見える化”:会場で具体的な旅程と価格をその場掲示(今回の例:19,800Bのファンミ、69,900Bの二カ国・台湾と沖縄を巡るクルーズ)し、参加しやすくしよう。

●年間を通じた露出頻度を確保しましょう。単発で終わらせず、SNSや日本関連の主要イベントで継続的に露出を行い、季節ごとの体験型イベントを組み合わせて観光地の想起を維持しよう。

まずは、イベントでパンフレットを配るだけでなく、抽選やクイズ、同エリア内の複数ブースと連携したスタンプラリーなど、参加型の仕組みを導入しましょう。
有名人の起用が難しい場合は、地元のマイクロインフルエンサーや来場者のSNS(ハッシュタグ投稿)を活用したプレゼントキャンペーンなど、予算や運営負担が軽い手法から試してみてください。
具体的な成功事例を踏まえ、私たちも支援いたします。

●お知らせ

1度の訪日で1名100万円以上を消費するような、地方への良質の外国人観光客の誘致のため、
タイとシンガポールからの「高付加価値旅行」誘致支援を開始しました。
https://asiaclick.jp/2024/08/08/6390/

東南アジアからの誘客は、お気軽にご相談ください。

アジアクリック 高橋学

バンコクで中国観光イベントが開催|中国ツアーは格安、訪日ツアーに影響も

中国の誘客イベントがバンコク都心で開催

バンコクの大型複合施設One Bangkokで、2025年9月12日~14日の週末に、中国観光・文化イベント「月見を楽しみ、満月は世界じゅうに」が開催されました。
ステージでは中秋節をテーマにした舞台が催され、四川省重慶やなどの自治体、Air Chinaや中国東方航空などの航空会社がブース出展し中国の地方のPRが行われました。

中国ツアー商品は格安で、四季の豊かな旅行先が揃っている

会場では、中国銀行などによる旅行商品の特別割引や0%分割払いといった価格面での訴求が前面に押し出されていました。 中国ツアーの価格は、たとえば重慶3泊4日が9,333バーツ(約43,000円)、同じチラシ内に掲載された東京・富士山ツアー5日3泊が26,888バーツ(約124,000円)と比較すると、訪日ツアーに比べて非常に安価でした。
中国ツアーは、北のハルビンから南の昆明まで幅広い気候帯を有し、日本と同様に一年を通じて春の花、夏の自然、秋の紅葉、冬の氷雪といった四季の観光地を横断的に提案できる点が強みとしです。

 

日本の地方のインバウンド誘致担当者も、中国など格安ツアーの競合を分析し、「高かろう・良かろう」戦略に役立てよう

更に、昨今はCompax – ASAHI TravelやA Double Plus、Jubilee Travelなど地方の訪日ツアー企画に特に強いタイの有力旅行会社や、Quality ExpressやSUPER TRIPといったタイの大手旅行会社が中国旅行商品の取り扱いを強化し続けています。 販売リソースや告知枠が中国向けに配分される局面が増えることで、同時期の訪日商品の露出や販売機会が相対的に薄くなる傾向が見られます。

日本側は、以下の点を進めることで、競合の強みを踏まえつつオーバーツーリズムに対処し、持続可能な誘客につなげることができます。

① 価格ではなく体験価値・時間価値で差別化
日本の地方ならではの体験や文化的価値を前面に出し、中国のような分割払いや早割、セット特典などの「安売り競争」は前面に出さず、富裕層や日本文化を理解できるタイ人リピーター層を地方に誘致する。

② 季節×地域の独自性を生かしたPR再設計
冬の景色とグルメ、秋の紅葉と温泉、春の桜と花見弁当といった、日本ならではの組み合わせで魅力を打ち出す。

③ 旅行会社が活用できる素材の早期提供
タイ人の目線で「美しい」「Unseen(まだ知られていない)」と感じられる画像や動画、モデルコースを作成し、遅くとも各シーズンの半年前までに現地旅行会社へ提供する。

当社も、タイとシンガポールからの「高付加価値旅行」誘致支援を開始しました。
https://asiaclick.jp/2024/08/08/6390/

お気軽にご相談ください。

アジアクリック 高橋学

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