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ASEAN訪日ブログREPORT

 【地方創生の新潮流】次のインバウンド市場はフィリピン!地方誘致のチャンスを掴もう

タイ市場を凌駕する可能性を秘めたフィリピン訪日市場

都市部におけるオーバーツーリズムが顕在化する中、インバウンド誘致においては地方への分散化が重要な課題となっています。東南アジアからの訪日観光客数推移(下図参照)によれば、フィリピンからの観光客数は近いうちにタイを上回る見込みです。タイ人観光客の誘致は量から質への転換期を迎えつつあり、今後の誘致数においては、フィリピン市場がタイ市場を上回る成長を示すと予測されます。

2023年度の訪日外客数において、フィリピンは81万8700人を記録し、対前年度比31.0%増と大幅な伸びを示しており、総数および成長率において高いポテンシャルを有する市場と言えます。

■東南アジア主要6か国訪日外客数(2019年-2023年-2024年対比)
※日本政府観光局「訪日外客統計」より、アジアクリックが独自にデータを編集

タイ市場と同様の参入障壁の低さ、テーマ性のある地方に商機

タイ市場と比較したフィリピン訪日市場の特徴は以下の通りです。

  • ●嗜好: 主にキリスト教徒であるため、タイ人と同様に食事や行動における禁忌はごく一部を除き、ほとんど考慮する必要がないと考えられます。
  • ●言語: 英語が公用語であり、公立学校でも基本的に英語による教育が行われているため、英語でのコミュニケーションが可能です。タガログ語や現地語を用いた営業手法は有効ですが、訪日プロモーションにおいては基本的に不要です。
  • ●団体ツアー: タイと同様に、団体旅行を得意とする旅行会社が一定数存在し、インセンティブ旅行の需要も高く、地方への誘致が見込めます。
  • ※フィリピンからの訪日客で団体ツアーに参加している割合は14.1%(観光庁「インバウンド消費動向調査(2024年10-12月期)」より)。
  • ●消費金額: 観光庁のデータでは他国と同様の消費額に見えますが、日本政府観光局(JNTO)マニラ事務所の渡辺所長によると、実際には「子供を含む大家族での旅行」が多いため平均額が押し下げられているだけであり、タイと同等かそれ以上の消費が期待できます。フィリピンは依然として所得格差が大きいものの、訪日者数の増加が示す通り富裕層も多く、日本人が抱くかつての貧困国のイメージとは大きく乖離している可能性があります。
  •  ・フィリピンの一人当たり旅行消費単価は約17万円、タイは約20万円(観光庁「インバウンド消費動向調査(2024年10-12月期)」より)。
  •  ・フィリピン人は親戚や友人が多いため、比較的安価なばらまき用のお菓子類を多く購入する傾向があります。今後の課題として、個人の買い物や自分へのご褒美としてより高額な商品を購入してもらうために、どこでどのような商品が購入できるかの情報提供を強化することで、消費額の増加が期待されます。
  • ●旅行先: 親族訪問を目的とする割合が依然として高い点はタイと異なります。近隣県の魅力を効果的にPRすることで、周遊や宿泊を促進できる可能性があります。子供が楽しめるアクティビティを旅程に組み込むことが重要です。

マニラ三越前

  • ●現地旅行会社: 日本の地方に関する情報が不足しており、情報提供は非常に歓迎されます。タイや台湾と同様に、フィリピンの旅行会社は営業活動を通じて信頼感と知識を蓄積するため、継続的な関係構築が有効です。
  • ●プロモーション: まずは有力な旅行会社へのセールスコールが効果的です。また、フィリピンには現在、ローカルのインバウンド専門メディアは存在しません。英語での情報収集に慣れているため、TripAdvisorやJapan-guideなどの欧米メディアを参考にすることも多いようです。ただし、フィリピンでは親族間の結びつきが非常に強く、日本在住者や訪日経験者からのSNSによる口コミが重視される傾向があります。Facebook、Instagram、YouTubeなどのソーシャルメディアを活用した施策も有効です。

 

2025年4月よりフィリピン人訪日ビザ審査体制がビザセンター方式へ移行

フィリピン人の訪日ビザ(観光目的)は、タイ人のように免除されていませんが、指定のビザ申請所で取得可能です。事実上、個人旅行(FIT)での訪日が容易となっています。

ただし、需要増加に伴う混雑が予測されており、ビザ取得の審査プロセスが変更されます。在マニラ日本大使館によると、「コロナ禍以降、訪日のための査証申請がかつてない高水準で増加しています。このような状況を踏まえ、今後とも日比間の人的交流の更なる活性化に適切に対応していくべく、目下、審査の質を適切に維持し、審査プロセスを効率化するための審査体制(ビザセンター方式)へ移行」するとのことです。具体的な変更点は以下の通りです。

フィリピン人の短期滞在ビザ取得プロセスは、2025年4月より以下の通り変更されます。

  • ・2025年4月7日より、新たな日本ビザ申請センター(Japan Visa Application Centre : JVAC)が開設されます(パラニャーケ市、マカティ市、ケソン市、セブ市、ダバオ市)。
  • ・3月19日より、JVACでの事前予約が可能になります。
  • ・申請者はJVACまたは日本大使館・領事館に必要書類を提出します。
  • ・審査期間は通常5営業日程度です。
  • ・審査通過後、短期滞在ビザが発給されます。
  • ・滞在期間は申請内容に応じて15日、30日、90日のいずれかが付与されます。

この新体制への移行により、フィリピンのホーリーウィーク(4月)に向けた日本への旅行需要が、ビザ問題の影響で一時的に鈍化する可能性はありますが、大使館によるビザセンターへの移行が完了すれば、ビザ申請がより円滑になり、継続的な訪日客増加が期待されます。

当社のフィリピンにおける誘致成功事例

  • 兵庫県豊岡市の神鍋高原スキー場への誘客を目的に、フィリピンの主要旅行会社6社に1泊のスキー体験パッケージの販売を働きかけ、実現に至りました。狙いは県内周遊時間と消費額の向上であり、PRポイントとして「大阪+雪体験」を訴求しました。
  • フィリピンの中華系旅行会社に対し、インセンティブツアーの顧客向けに秋の東北ツアーを提案し、バス1台での青森~東京6泊のツアーが実現しました。「紅葉といえば東北」というイメージの浸透に成功し、次回の企画として樹氷をテーマにした冬のツアーも検討されています。
  • その他、パートナー企業の成功事例として、佐賀県での映画撮影誘致やインフルエンサー招聘など、現地でのオフライン・オンライン施策を通じてフィリピンからの送客実績を積み重ねています。

フィリピン旅行博TMEが7月に開催

2025年7月に開催されるTravel Madness Expo(TME)には、日本政府観光局(JNTO)のパビリオンが出展される予定であり、また、JNTOパビリオン外でもPRブースへの参加が可能です。JNTOパビリオン内への出展では、日本への関心が高い来場者からの情報収集が期待できます。一方、JNTOパビリオン外に出展するメリットとしては、物販が可能であることが挙げられます。

TME日本JNTOパビリオン

Travel Madness Expo(TME)公式ウェブページ: https://travelmadness.org/

ブース出展をご検討されない場合でも、弊社では旅行博視察時に現地の有力旅行会社へのセールスコール支援も承っておりますので、マニラの状況についてもお気軽にご相談ください。

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