前回までの記事
ASEAN市場とは①〜一枚岩でないASEAN諸国。国々の中の民族や宗教など個々の理解が必要
ASEAN市場とは②〜中国ビジネスの失敗から学ぼう
だからこそ、私の周りの人々には、日本人には私のような失敗をしてほしくない。市場を知ってから、民族性やリスクを知ってからその国でのビジネスを深慮してほしい。
昨今、やれイスラム市場だ、インドネシア市場だ、世界の工場ベトナムだと進出熱が高まっているが、今一度静かに検討をしてみていただきたい。
「東京や大阪、地方ではそのビジネスはできないのか?」
「それぞれのデメリットとメリットを比較したらどうか?」
「慣れない土地で、相手のルールでビジネスするほどの理由があるのか?」
もちろん、世界の5人に1人を占めるようになるイスラム市場は魅力的だし、親日で日本の倍の人口であるインドネシアも中国に次ぐ隣りの大市場として検討したほうが良い。しかし、自社の商品や達成したいことは外国に打って出てまでする必要があるのだろうか?
検討材料としてのASEAN各国の比較情報を、拙い経験と知識の中から皆さんに共有していきたい。
(アジアクリック/高橋学)
ASEANは多様だ。
10カ国のうちには民族が数百、言語も数百、ほぼ全ての人がそれぞれ異なる宗教を持っている。
当社アジアクリックは、シンガポールをハブに多様性に富んだASEAN市場を現地からお伝えしている。
そのために、毎週毎週シンガポールやらジャカルタやらホーチミンといったASEANの主要都市をめぐり、日系企業や政府系組織の現地市場調査、PRの代行など、おおよそ複数国同時に行っている。当社は各地に特派員と呼ばれる現地スタッフがいるのだが、彼らに会って励まし、人間関係を太くし、また新たに現地で特派員をリクルートするという作業をここ2年以上続けている。
私は元々、みちのく仙台の田舎出身で、20代も半ばまで外国人と話したこともないし、外国に行ったこともなかった。その時までの気持ちを思い返してみると、やはり外国と言わずアジアの国々と言わず、行ったことのない異国というものはまったくもってどんな国でどんな人々がどんな暮らしをしているのか検討もつかない。私が週替りで周っているタイ・マレーシア・シンガポール・インドネシア・ベトナム・フィリピンなどもその類だろう。
この連載が少しでもASEANの理解に役立っていけば大変有り難く思う。
■一枚岩でないASEAN諸国。国々の中の民族や宗教など個々の理解が必要

冒頭でも触れたように、東南アジアの国々はそれぞれ全く違う。
発展途上国として、また歴史的な民族や宗教といった共通傾向と共通点もあるのだが、それらを知った上で個々を理解しておかないと炎上や想像もつかなかった陥穽にも陥らないとも限らない。ASEANビジネス成功の第一の秘訣は「失敗しないために民族・宗教など現地民を知る」ことである。

次回からは私の海外ビジネスの失敗経験を紹介し、基本ルールを考えてみたい。
ASEAN市場とは②〜「中国ビジネスの失敗から学ぼう」につづく。
(アジアクリック/高橋学)