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青森ツアーが1名60万円でも人気のタイ市場。12万〜150万円の価格差を「一括り」にはできない。今求められる「ターゲット精査」。
バンコクで開催中のFITフェア、および現在のタイ市場における訪日商品の価格帯を定点観測していますが、その価格差の拡大と市場構造の変化には、大きなチャンスと課題が混在していると感じます。
今回は、現地で販売されている実際の価格データをもとに、タイ市場の現状を深掘りしてみたいと思います。
まず、今冬から来春に向けた募集型ツアーの最安値圏は、福岡3泊5日の24,999バーツ(約12.5万円)です。これは航空座席や宿泊の仕入れの工夫により、手頃な価格を実現している典型的なエントリー商品と言えます。
対して、高価格帯のスタンダード商品は1人あたり12万から14万バーツ(60万から70万円)が相場となっています。 行き先は定番の北海道だけではありません。今回のFITフェアで存在感を示している東北エリア(青森・福島・宮城・仙台)をはじめ、埼玉、中部エリアの岐阜、関西・中国・四国エリアでは鳥取や兵庫・岡山・香川、そして九州の福岡・大分・長崎など、実に多様な地域へのツアーがこの高価格帯で造成されています。
具体的な事例として、東北エリアでは福島・宮城(仙台)・山形を巡る6泊8日のツアーが130,000バーツ(約65万円)で販売されており、地方周遊型の商品が高付加価値化していることが分かります。
中でも、タイ人にとってユニークな体験が多い羽田経由青森への団体ツアーが1名約60万円でも毎回催行されており、商品がシリーズ化しつつあります。
ここで注目すべきは、欧州ツアーとの価格逆転現象です。
現在タイの海外旅行市場では、イギリス、フランス、イタリア、スイスなどを巡る欧米ツアーは6万から8万バーツ台(30万〜40万円台)が主流です。つまり、日本の地方を巡るツアーは、今や欧州旅行よりも高額な商品として流通している傾向があります。日本旅行はもはや安近短だけの旅行先ではなく、欧州と並ぶ、あるいはそれ以上のプレミアムなデスティネーションとして認識されつつあります。
さらに、タイ富裕層向けの動きは天井知らずです。
変わり種の高級商品として、2026年のTRAIN SUITE 四季島ツアーは100万円台。弘前城やねぶたミュージアムにも立ち寄り、日本と韓国の桜を観賞するダイヤモンド・プリンセスのクルーズ12日間は、279,000バーツ(約140万円)で販売されています。
また、近年主流となっている家族単位でのプライベートツアー(専用車手配)では、1人あたり20万から30万バーツ(100万〜150万円)という単価も、決して珍しい数字ではなくなりました。 家族にユニークな体験をさせたい、特別な思い出をつくりたいという強い需要があり、それに見合うデスティネーションがお抱えの旅行会社から複数提案されているのが現状です。
ちなみに、タイはJNTOの定める高付加価値旅行市場としては英国や中東市場より上で、シンガポールに続く8位(全訪日高付加価値旅行者の3.8%をタイ高付加価値旅行者が占める)となっています。このデータからも、タイ市場のポテンシャルの高さが伺えます。
これだけ多様な価格帯とニーズが存在するタイ訪日市場構造に対し、我々受け入れ側はどう動くべきでしょうか。
自治体やDMOが単にタイ市場と大きく捉えるのではなく、当県の商品はどの価格帯で、どの層に響くのかを明確にすること。ターゲットをより精査(セグメント)することで、プロモーションの効果を最大化し、受け入れ態勢もスムーズに構築できる段階に入っていると言えます。
ターゲティングと提携旅行会社の選択肢に関しても、お気軽にご相談ください。
アジアクリック 高橋学
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