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【レポート】仙台がバンコクを彩ったジャパンフェア「THE MALL JAPAN DISCOVERY 2025」

2025年7月25日から8月3日まで、タイ・バンコクにある商業施設「ザ・モール ライフストア バンカピ(M GRAND HALL, G階)」にて、定期定期に開催されているプロモーションイベント「THE MALL JAPAN DISCOVERY 2025」が仙台の七夕祭りをテーマとして開催されました。

本イベントでは、宮城県仙台市が観光と食の両面でタイ市場に向けたプロモーションを実施。既存の「SUGOI JAPAN」イベントの仙台バージョンとして、東北ならではの魅力を発信しました。


会場演出・体験コンテンツ

会場は仙台七夕まつりをイメージした華やかな吹き流しで彩られ、日本らしい雰囲気が漂っていました。

タイ人来場者は、短冊に願い事を書く体験にも参加し、「家族の健康」や「幸せ」など、思い思いのメッセージを日本文化に倣って記していました。

さらに、浴衣を着て日本式の人力車(じんりきしゃ)に乗る体験も提供され、家族連れを中心に人気を集めていました。

また、仙台市の公式観光キャラクター「むすび丸」も登場し、記念撮影などを通して交流を深める姿が多く見られました。

ステージ上では「DAISUKE SENDAI – LEGEND OF SAMURAI」と題した本格的な時代劇パフォーマンスが行われ、映画のような演出に会場全体が引き込まれていました。子どもから大人まで、タイ人参加者から非常に高い評価を得ていたのが印象的です。


仙台・宮城の特産品販売

物販コーナーでは、仙台や宮城県の特産品が多数紹介・販売されていました。中でも注目されたのは以下のような商品です。

  • 仙台牛の焼き実演

  • ずんだ餅やずんだスイーツ

  • 喜久福(抹茶大福)

  • いかめんたい、もずく、そうめんなどの海産加工品

グルメを通じて、仙台の食文化に触れられる機会として、試食や購入を楽しむタイ人来場者の姿が多く見られました。

バンコクの中間層は日常的に日本料理を食べるようになってきており、一通りの日本料理は揃っているため、昨今は特に地方料理に興味が向けられています。


タイ市場へ進出する意義

現在のタイ市場では、訪日旅行先の選定基準として「地方らしさ」や「食体験」が強く求められています。中間層・富裕層ともに旅行意欲は高く、タイ語でも地方へ訪問するための情報はそろっていますので、たくさんある候補地の中でもSNSを通じた情報拡散や刷り込みによって「まだ知られていない魅力的な地方都市や地方」を訪問先として選ぶ傾向がますます強まっています。

また先にも触れたとおりバンコクの訪日リピーターにとって、本物の食、まだ食べたことのない地方ならではのグルメは訪問地候補に入るためのでも重要な要素の一つであります。

仙台市のような地方中枢都市は、東京・大阪とは異なる独自性あるコンテンツを「東北・東日本としての広域周遊で」提供できるため、今後の訪日インバウンドにおいて、タイ人訪日リピーターにとってとても有望なディスティネーションであり、その意味で、今回のように現地イベントを通じて体験的に訴求する手法は、非常に効果的なPRアプローチと評価できます。

その他、昨今のタイや東南アジアでの有効な最新プロモーション事例などはお気軽にお問い合わせください。

アジアクリック 高橋学

バンコクで17万人を集客、「マカオ×香港」プロモーションの衝撃。 日本は「強み」の再発見が急務

昨今、タイ・バンコクでは、福岡など日本の自治体や、香港観光局、台湾観光局、韓国観光公社などのNTOが、屋内外でさまざまなタイ人観光客誘致イベントを次々と開催しています。

結論:世界と戦うには「ユニークさ」を「誰に届けるか」

今や日本のインバウンドは、香港・マカオのような大規模かつ多様なプロモーションと“都市×都市”の組み合わせ体験(インバウンド業界用語だと「地方周遊」)に真正面から競争を挑まれています。
この現実を直視し、日本の各地方独自の“ここだけ”の魅力を、的確にターゲットに届ける戦略が、我々日本の地方には不可欠です。  まずは以下より詳しくバンコクの状況を見ていきましょう。


マカオ政府観光局のバンコクでのイベントの概要

マカオ政府観光局(MGTO)は、タイ人観光客誘致強化を目的にExperience Macao」ロードショーが実施され、2025年6月6日から8日までの3日間、バンコクのサイアムパラゴン(Siam Paragon)で「Experience Macao(Macao Wonder)」ロードショーを開催しました。このイベントは、タイの一般消費者や旅行業界関係者を対象に、マカオの多彩な魅力(文化・エンタメ・グルメ・MICE・スポーツなど)を体験できるテーマブースやインタラクティブなゲームゾーン、タイの人気アーティストによるライブパフォーマンス、現地限定の旅行商品・航空券・宿泊パッケージの即売などを展開。
マカオの6大統合型リゾート企業や主要航空会社、旅行会社も参加。タイのeペイメント企業と連携した割引特典も提供されました。
結果として、累計175,423人が来場し、1,006件のホテル・航空券パッケージが販売され、総取引額は640万バーツを超えました。
(当日の様子の動画。 音が出ます)

出典:MGTO https://www.gcs.gov.mo/news/detail/en/N25FIv6Vva

成功の理由:「世界遺産」と「東京と大阪を一度に楽しむ」ような非日常体験を提供

当「Experience Macao」ロードショーは、サイアムパラゴンというバンコク最大級の商業施設で、現地人気キャラクターや有名アーティストを活用した五感体験型イベント、SNSやデジタルサイネージを駆使した情報拡散、航空券やホテルの即時割引販売、eペイメント連携など、現地消費者の心をつかむ具体的な仕掛けを多数展開し、3日間で17万人超を動員しました。
一方、バンコク~香港のLCC往復は約27,000円から、香港ディズニーランドや巨大モール、マカオのカジノや世界遺産など“東京と大阪を一度に楽しむ”ような非日常体験を短期間で味わえる手軽さとコスパが、タイ人旅行者の心を強くつかんでいます。  具体的な仕掛としては

 ■ゆるキャラたちがバンコクの街を練り歩き、話題作り:タイ人はキモかわいいキャラが大好き
 ■五感で楽しむブース: クラフト体験、世界遺産フォトスポット、VRカジノ体験
 ■即時購入誘導: AirAsia航空券199バーツ、Thai Lion Air 50%オフ、Agoda半額「会場限定QRコード」配布
 ■eペイメント連携: TrueMoney/Rabbit LINE Payと提携、マカオで使える5%即時割引クーポンを配布
 ■BTS駅128か所のデジタルサイネージ: 1日あたり650万回の映像露出を3日間継続
 ■TikTokハッシュタグ #เที่ยวมาเก๊าแบบWonder: イベント関連動画が3日間で2,300万回再生
 ■インフルエンサー協働: YouTuber「Mai Davika」がマカオの隠れスポットの紹介動画を事前に40本配信

このように、プロモーションを「お祭り感を演出し、楽しさを前面に押し出して」一気に実施し、マカオ行きの即売会を盛り上げました。


各国政府観光局との競争の現実

以上の通りJNTOがタイで行ってきたFITフェアに勝るとも劣らない大規模かつ集中的に当該イベントが実施されました。
当該イベントのPRの目玉としては、
・香港・マカオのLCC往復航空券(約27,000円前後)は東京~大阪の新幹線往復(約29,000円)程度と格安にも関わらず更なるディスカウントの機会
・「ディズニーランド+世界遺産+高級ショッピング」を3日間で体験できる
コスパの良さが支持されています。

これはまるで世界遺産と東京と大阪を格安航空券で楽しめるようなものです。
このように、攻勢を強める世界のディスティネーションに我々日本の地方が対抗するには、地方の「ここだけ」の体験 が鍵となります。 以下に参考となり得る事例を紹介します。

今タイで好感されている、日本の地方の差別化事例

■青森県; 海釣りやイカの新鮮なグルメ体験、弘前のアップルパイ巡りなど、地方ならではの体験が豊富です。バンコクから羽田経由で青森空港までバゲッジスルーで行けるためアクセスも良好で、東北周遊ツアーでもコストパフォーマンスの高い旅が可能。

■夏の上高地: タイ人は「暑いタイから、もっと暑い日本の夏に行Alexaおはようきたくない」と言います。 常夏のタイでは暑さが敬遠され、涼しさが好まれる傾向があります。暑そうだと思われてしまうと、興味を持ってもらえないことが多いです。そんな状況下で夏の上高地が人気なのは標高約1,500メートルの高地に位置し、夏でも涼しく快適な気候で自然を満喫できる口コミがSNSを中心に広がったためです。また、名古屋・アルペンルート、富士山、東京等ともFIT・団体ツアーともに組み合わせやすく、リピーターも生んでいるようです。

■網走の流氷体験ツアー: 流氷観光砕氷船おーろらの乗船や、専用スーツを着用して流氷の上を歩く流氷ウォークなど、北海道ならではの冬の自然を体感できます。これらの体験は、年々タイの現地旅行会社でも採用が増えており、北海道ブランドの中でも差別化された人気コンテンツとなっています。


ユニークさを再発見し、「自分自身のメディア」で発信し、自らファンを育てよう

日本のインバウンド事業者は、アジア全体を巻き込んだ激しい観光プロモーション競争の中で、「自分たちの場所にしかないユニークな価値」を明確にし、それを“分かってくれる外国人に確実に届ける”戦略こそが、今後の生き残りのカギと考えます。

1,自分たちの「ユニークさ(世界インバウンド市場における強み)」はなにか?
2,その「ユニークさ」を分かってくれる顧客層はどこの誰か?
3,インバウンドの目的に応じ、1,2で最も効果的な手法はなにか?
4,「自社メディア」で情報発信・会話を継続し続けることでファンを育てていく

世界でのインバウンド誘致合戦の中、既にインフルエンサー活用や広告のみでの閲覧数稼ぎの時代は過ぎ、地域固有の魅力を再発見し磨き上げ、数は少なくともファンになってくれるターゲットに届く形で、Facebookページなど自身の持つメディアで発信し、ファン候補と会話を続けファン化していく。
――この地道な積み重ねこそが、世界を相手にした観光競争で勝つための現実的な道と考えております。

私たちも、地方ならではの生き残りに向けて、皆様と共に歩み、ご支援させていただきたいと存じます。

アジアクリック 高橋学